今年のはじめに、
ひとつの意義深い仕事をいただきました。
「原風景」を描くというものです。
事の起こりは昨年12月12日、
阿波高校OBの高松尚輝さんからのメールです。
高松さんは横須賀で小学校の先生をされていますが、
このたび横須賀で仕事を続けていく決意をされ、
新居を購入されました。
けれども故郷・徳島を愛するお気持ちに変わりはないということで、
新居を彩るものとして徳島の風景を描いた私の作品を飾り、
徳島の原風景に触れ、心の拠り所としたい、
というお申し出をいただきました。
「こころのふるさと」というのは
私の制作のテーマでもあり、
とてもうれしく思いました。
それで、
高松さんご自身の最もなつかしく思われる場所を
私が描くというのはいかがでしょうか、
という提案をさせていただくと、
とても喜んでくださり、
早速2枚の写真を送ってくださいました。
ひとつはご実家の庭から南の方を眺めた風景。
この道にはどこか遠くの世界に通じる印象があったのだそうです。
もうひとつは逆にご実家の方を望んだ風景。
通学距離が長かった小学校からの帰り道、
やっとほっとすることができた、
ご自分の家が見えるようになったあたりの景色です。
今年の正月、帰省された高松さんにお会いして、
実際にその場所をご案内いただき、
相談の上、2つとも描かせていただくことになりました。
描き始めてみると、とても楽しく、
大きなやりがいを感じました。
その後大阪での個展が入り、
いったん中断しましたが、
6月末に一つの作品を完成させることができました。
題名は「夏の朝」。
とても喜んでくださり、
シンガーソングライターでもある高松さんは、
同名の歌を作ってくださいました。
とてもいい歌です。
歌詞だけでもご紹介しておきたいと思います。
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夏の朝
風薫る 雲の峰 蝉時雨 陽炎
朝曇り 時津風 草いきれ 夏木立
緑燃ゆ 夏の朝 流れてく 雲に
向かって 歩いてく 僕のことみんなが見つめてる
あの道を僕はどれだけ眺めていたんだろう
曲がりくねったその先に見果てぬ夢を描いて
たどり着いたこの場所で根を下ろすことにした
そんな僕が築いたのは小さな白い家
風死して 炎天下 雨乞えば 夕立
夕凪 夕焼け 短夜 空には天の川
厳しかり 夏の日は 喜雨さえも気休め
それもまた 夏ゆえに 打ち水 風鈴 走馬燈
あの道に僕はどれだけ包まれていたんだろう
白い家に届けられた一枚の「夏の朝」
いつも自分の思い通り生きられるはずはない
そんなとき支えてくれる いつも一緒「夏の朝」
あの道は今の僕の原風景(みなもと)と呼べるだろう
溢れんばかりの思いを光と色に詰め込んで
これからまた歩いてく 新たな道へ踏み出して
半夏生 白い家 夏の朝・・・
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そしてもうひとつの作品「帰る」は、
8月11日に完成。
お盆休みで帰省されていた高松さんは、
14日に、お母様、お姉様といっしょに
受け取りに来てくださいました。
「夏の朝」の生演奏も聴かせてくださったのですが、
そのとき、
高松さんが小学生の時に亡くなられたお父様が、
演奏される高松さんの肩の上に手を置いておられる姿が見え(感じられ)、
こみあげてくるものがありました。
ほんとうにやりがいのある仕事をさせていただいたことに感謝です。
高松さんの「白い家」に飾られている「夏の朝」