八木和彦: 2011年12月アーカイブ

今年後半にあった出来事をもう一つ紹介させていただきます。

 

鳴門市役所人権推進課に勤めるKさん(阿波高時代の教え子)とのご縁から、

10月15日(土)13:30~15:30、鳴門地域地場産業振興センターで行われた

「第18回鳴門市人権セミナー」の講師を務めました。
 

 

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60余名の方々が聞きに来てくださいました。

 

お忙しい中、貴重な時間を割いて

人権についての研修をされるという

その高い意識には頭が下がります。

 

「感性でとらえる人権」というテーマで話をさせていただきましたが、

その骨子は下のようなものです。


1 どうすれば人権を大切にできるか ―どうすれば人間存在のすばらしさを感じられるか

2 作品集「郷愁 ―こころのふるさとを求めて―」について ―時間と永遠について

3 教員時代に実践した人権教育

  ①特別活動

  ②美術の授業「自然と人間」

  ③人権授業「どうしたら差別意識をなくせるか」

4 「本当の自分」を見出すことが「人権」を大切にすることにつながる

5 ビデオ作品「For My Parents」

 

3-③の部分ですが、

教員時代の授業内容の紹介として、15分ほどですが、

静かな音楽を流してリラクセーションを図り、

来てくださった方々がそれぞれに

ご自分の心の奥にある「なつかしい場所」を探る時間をとったりもしました。

 

「差別意識」というものは

「自分」というものの「絶対的価値」を認められないことに起因し、

「他者」と比較することで自分の(相対的)価値を確かめようとするところから

生じるものだと思います。

 

そして、誰の中にもある 「心のふるさと」―「真我」に触れることができれば、

「差別意識」は不要となり、一瞬にして消えるものだからです。

 

でも、内容を盛りだくさんにしすぎて、

最後にお見せするべく準備していたビデオ作品「For My Parents」は

時間切れで発表できませんでした。


けれども、

「絵や音楽などを通して今までに学習したことのない人権について学ぶことができました。」

「帰るところをつくるために、子どもには幸せな子ども時代を過ごさせてやれるようにしないといけないと思いました。」

「ふるさとは自分の中にあるという言葉が印象に残りました。自分に目を向ける久々の機会になってよかったです。これからの人生、辛いときに思い出せるといいなと思います。」

「差別は自分の心次第なんだ。あたたかい絵に感動した。」

「少しの時間であったが静かに自分について考える、というか本当の自分を自分の中に見つけに行く時間が持てたことがよかったと思う。」

「難しい言葉を並べたセミナーでなく、美術作家ということもあって感じることから人権を考える、新しい考え方だと思いました。良かったです。」

「楽しいセミナーでした。人権問題のよくわからないセミナーもありますが、今日は人間らしさみたいなことがわかったような気がします。」

「今ある自分、自分の家族を大切に、毎日を見つめ直してみようと考えさせられる貴重なお話でした。」

等々というご感想もいただき、

不慣れではありましたが、

やらせていただいてよかったと思いました。

 

貴重な機会をいただいたKさん、鳴門市人権推進課の皆様、

聴覚障害がある方々のために話を文字にしてOHPで伝えてくださったボランティアの皆様、

ケーブルテレビで放映してくださったケーブルテレビ鳴門の方々、

お忙しい中ご参加くださった皆様、

本当にありがとうございました。

 

 

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会場後方には2つの3D作品と原画を展示し、

来てくださった方々に見ていただきました。

 

今年もいよいよ残りわずかとなりました。

 

今年後半の出来事で、

まだご紹介できていなかったことを2つ記しておきたいと思います。

 

今日はその1つめ、眞野孝彦先生との2人展(9/1~30)について。 

 

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展覧会案内状

 

 

眞野先生と初めて出会ったのは、1997年の秋、

鳴門市のUZU珈ギャラリーで個展を開いたとき、

当時担任していた高2のクラスにいたJ・Tさんからのご縁で

展覧会を見に来てくださったときでした。

 

その後もお互いの展覧会でお会いしたり、

私が教員を辞めようと決めて後、

眞野先生が主宰する絵画教室に参加して勉強させていただいたり、

何回か一緒に写生に行かせていただいたり...と、

お付き合いが続いていました。

 

眞野先生は昭和5年生まれの81歳。

今でもご自分で車を運転して

長野県あたりまでスキーに行くなど、

その元気さは超人的です。

 

また、老人ホームでエレクトーン演奏のボランティアをされたり、

短歌の指導をされたり...と多才で、

何ものにもとらわれず人生を楽しむ

自由自在な生き方はすばらしいと思います。

 

 

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展覧会場の眞野先生

 

 

展覧会期間中は、

毎日曜日の午後、会場に出向いていましたが、

眞野先生からいろいろ楽しいお話を聞くことができました。

 

この展覧会について、徳島新聞の美術展評では、

徳島県立近代美術館学芸員の安達一樹様から

下のような評をいただきました。

 

2011122903.jpg下は今年5月下旬、

眞野先生からのお誘いで共に写生に行かせていただいたときの絵です。

眞野先生のご自宅近く、

閉鎖直前の吉野川遊園地の観覧車が見える風景です。

 

 

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画面左、

木陰で写生をしているのが眞野先生です。 

 

 

高宮画廊様のご縁で

ギャラリーミヤコ様にお世話をいただき、

2012年1月19日(木)~25日(水)に

京阪百貨店 守口店6階 京阪美術画廊Ⅱ にて

展覧会を開いていただけることになりました。

(詳しくはこちらをご覧ください。)

 

 

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今朝、届けていただいた案内状です。

 

 

高宮画廊での展覧会以降の新作6点を加えて

絵画作品25点を出品させていただきます。

 

私は1月19日(木)、20日(金)、21日(土)、22日(日)に

会場で皆様のお越しをお待ちしております。

 

是非ご高覧くださいますよう

お願い申し上げます。

 

 

新作「追憶の道」

 

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「追憶の道」 2011 パステル・紙 27.0×16.0㎝

 

 

描き始めたのは昨年の9月ですが、

今年10月頃仕上げました。

 

私は、なつかしさを感じさせるものに惹かれ、

そのようなものを描いてきました。

 

この作品もそのうちのひとつとは言えるのですが、

過去の景色を描いたものではなく、

この風景は今もこのとおり実在します。

(JR蔵本駅東踏切付近の風景です。)

 

道行く自転車の人は、

過去の記憶に照らし合わせて、

父と子どもの頃の私にしましたが、

(父が自転車の荷台に乗せてくれて

いろんなところに連れて行ってくれたことは

私にとって大切な思い出になっています。)

この風景は過去のものではありません。

 

私の描く絵の多くはそのようなもの

―「今」を描いたものです。

 

けれども多くの方々が絵を見て

「なつかしく感じた」と言ってくださいます。

 

「なつかしい」という言葉は、

慣れ親しむ意味の「なつく」が形容詞化して

できたものだそうです。

 

「慣れ親しみたい」「身近に置いておきたい」「手放したくない」

というような感情表現で用いられたもののようで、

つまりは「幸せな記憶」と結びつくものだと思います。

 

だからたとえば小さい頃の「幸せな記憶」を思い起こさせる、

そのとき見た風景とよく似た風景を見ると

「なつかしく」感じるのでしょう。

 

けれども、私たちの身のまわりの風景は

どんどん変化しています。

 

私くらいの世代の人々が感じる「なつかしい景色」と、

今の若い世代の人々が感じる「なつかしい景色」は、

きっと違っていることでしょう。

 

だから誰にとっても「なつかしい景色」などは

ないと言えるかもしれません。

 

少なくとも町の様子など、人工的なものについてはそうでしょう。

 

それでも私は「普遍的ななつかしい景色」って

あるのではないかと思っています。

 

時代を超えて変化のないもの...

 

それは「光」です。

 

光と影がもたらす視覚的効果です。

 

究極の幸せ―最も深い記憶である「心のふるさと」=「真我」=「宇宙意識」=「神」

を思い出させる「微妙な光と影の効果」を描いていきたいと思います。

 

 

高宮画廊での展覧会(今年6/1~11)以降の新作を

紹介していきたいと思います。

 

高宮画廊での展覧会では、

我が師・津田季穂を心から敬愛されているSさん(兵庫県在住)に

多大なご助力をいただきましたが、

そのSさんから「聖母像」(立体作品)制作のご注文をいただいていました。

それほど場所をとらないもの、という以外

どのような像にするかは

すべて私にお任せくださったのですが、

最初は下のようなものを立体化することを考えました。

 

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「無原罪の聖母」1988年

 

 

親友のご長男誕生のお祝いに制作したものですが、

この図像はもともと「不思議のメダイ」のものです。

 

1830年、フランス・パリ・バック通り140番地

「聖ビンセンシオ・ア・パウロの愛徳姉妹会」の修道院聖堂で、

聖母がカタリナ・ラブレ(修道女)の前にこのような姿で現れ、

この図像を刻んだメダイを作るよう指示がありました。

 

そのメダイを身につける人々に多くの奇跡が起こり、

「不思議のメダイ」と呼ばれて広まり、

今も世界中でたくさんの人々が身につけている、

というものです。

 

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不思議のメダイ(表・裏)(1987年に現地で買った絵はがき)

 

 

私は20歳代後半頃にも

この図像を立体化することを試みましたが、

作品は未完成のまま今も私のアトリエにあります。

 

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けれども今の私は、

このような神々しい姿より、

神的愛の象徴、母性の象徴とも言えるような聖母像を作りたい

と思うようになりました。

 

神的愛は無限の深さがあり、

私たちには計り知れないものだと思いますが、

私たちが感覚的に、あるいは体験的にとらえやすいのは、

親が子に向ける愛の姿ではないでしょうか。

 

具体的な形にするなら、

それは権威ある姿などではなく、

この世的には貧しく力もない母親が、

その愛し子を全身全霊で慈しむ姿にしたいと思いました。

 

 

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そして9月13日、このような作品ができました。

題名は「子守歌」。

 

10㎝ほどの深さのある額縁入りで、

下のように2個のLED電球を使っています。

 

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背景は何故か夕暮れ時の空になりました。

 

この世での生を終えてあちらの世界に帰って行くとき、

私たちの魂はこのように神的愛に迎えられるのではないか、

などと想像しながら作りました。

 

否、実は私たちは、

今もこのように、大いなるものに抱かれているのかもしれません。

 

 

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立体で表現した、ひとつの「原風景」です。

 

 

   

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2011年8月18日 四国放送「フォーカス徳島」より

 

 

高松尚輝さん(横須賀市在住・小学校の先生)からの依頼で、

故郷・徳島の原風景を描かせていただいたことは、

8月16日、「原風景」を描く で紹介させていただきました。

 

 

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「夏の朝」 2011 油彩・キャンバス 31.8×41.0cm(F6)

 

 

シンガーソングライターでもある高松さんは

1点目「夏の朝」について

同名の曲を作ってくださり、

「原風景」を描く で歌詞も紹介させていただきました。

 

 

 

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「帰る」 2011 油彩・キャンバス 24.2×33.3cm(F4)

 

 

そしてこのたび2点目「帰る」についても

歌を作ってくださいました。

 

まず歌詞を紹介させていただきます。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

  帰る~こころのふるさとへ~

 

「今」という時間は いつから「過去」に変わる?

幼い日の記憶は やはり「過去」のものですか?

あのときの「今」があり 今の自分があるなら

「過去」も「今」も同じ それは「永遠」と呼べるでしょう

帰ろう 帰ろう それぞれの胸の中にある

帰ろう 帰ろう こころのふるさとへ

 

「今」という時間は これからどこへ向かう?

夢を描いている 「その日」はいつ訪れますか?

来たるべき「その日」を 胸を張って迎えるため

僕は「今」を生きる なつかしきものを支えにして

帰ろう 帰ろう それぞれの胸の中にある

帰ろう 帰ろう こころのふるさとへ

 

帰ろう 帰ろう こころのふるさとへ

帰ろう 帰ろう いつでも、今すぐにでも

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

短い歌詞の中に「時間を超える」というテーマが

力強く歌われていてすばらしいと思いました。

 

高松さんの胸の中にある熱いものが

多くの方々の心にも届きますよう、

心からお祈りしています。

 

こちら myspace で是非2曲ともお聴きください。

 

 

「原風景」を描く(2)

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今年の8月18日、

四国放送のニュース番組「フォーカス徳島」の中で、

私が昨年7月、宮沢賢治の故郷・花巻を訪れ、スケッチをしたことについて

「宮沢賢治の岩手・花巻 心のふるさと 描き残す」というタイトルで紹介してくれました。

 

宮沢賢治の作品の中に描かれている「心のふるさと」を

花巻の随所で実感し、描いたことによって、

徳島に帰ってからも身近なところに「ふるさと」を見出しやすくなっていった...

そんな私に、思いがけずふるさとの「原風景」を描いてほしいという依頼が舞い込み、

2枚の絵を描かせていただいたことも紹介していただけました。

あの震災によって

「本当に大切なもの」に目を向けざるを得なくなった私たちと、

宮沢賢治が求め続けたものとの関連をも暗示し、

8分17秒という短い時間の中に、よくまとめてくださっていました。

 

さて、その数日後、

テレビを見てくださった、近所にお住まいのNさんから、

ご主人のお母様、そしてご主人の原風景でもある

古い家を描いていただけませんか、というメールをいただきました。

 

Nさんは、私の息子2人がお世話になっている

少林寺拳法加茂名道院の拳士仲間であるTaichiくん(小6)のお母様で、

私の個展を見に来てくださったり、

また私が勤めていた阿波高校のご出身ということもあって、

私も妻も親しくお付き合いさせていただくようになりました。

 

そのNさんのご主人のお母様がご高齢になり、

このたび、お母様が慣れ親しんだ中島田町(私の近所)の土地に

新しい家を建て替えて、同居をしようということになったということです。

 

けれどもお母様にとって、その古い家は

嫁として母としてがんばって、

何十年も生活した思い出がたくさん詰まった家なので、

できたら壊したくないという気持ちが強いとのこと...

 

けれど築62年にもなっていて、

そのまま住むのもリフォームするのも無理があり、

同居をするためには、この際建て替えるしかない...

そんなときにテレビで、私が高松尚輝さんの故郷の風景を描き、

それが高松さんの横須賀の新居に飾られているところを見て

「あっ!」と思われたということです。

思い出の家を描き残してもらって、お母様の部屋に飾ってあげたいと...。

 

とてもやりがいのある仕事のお話、

喜んでお引き受けしました。

 

なつかしいおうちの前でご家族がおられるところを描くことになり、

まずは古い写真のアルバムを見て参考にさせていただきました。

 

そして何度か現地に行って、写真を撮ったり、

スケッチをしたりしました。


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子どもの頃に私を包んでくれていたなつかしい世界を思い出させてくれるおうちでした。

 

 

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今、もうこのおうちはありませんが、

このおうちが与えてくれたものは

心から心へと受け継がれ、

ずっと生き続けていくことでしょう。

 

また、このたびのの経緯は

四国放送さんの方で取材してくださり、

年が明けてからテレビで紹介していただけることになりました。


 

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私の活動を深くご理解くださり、

いつもていねいに、そして精力的に取材してくださる

カメラマンの久賀栄二さんです。


 

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8号キャンバスに描き始めましたが、

こんな構図で制作を進めています。

 

時代は昭和39年か40年頃...

 

中央には一番上のお兄様と、バイクが好きだった亡くなられたお兄様に抱かれた

小さかった頃のご主人...

 

それを見守るお母様と、亡くなられたお父様...

 

その様子を家の窓から見ているのは

現在のご主人とNさん、そしてTaichiくんです。

題名は「小春日」。

新しいおうちの完成に合わせて、来年3月はじめ頃完成の予定です。

 

 

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名前:八木和彦

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