花巻への旅 6日目 7/16(金) 「すでにドリームランドである花巻」

花巻での最後の日。

 

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照井菓子店(7/15撮影)

 

11:55発の飛行機で帰ることになっていましたが、

チェックアウトを済ませ、

旅館向かいの照井菓子店(ここはかつて「心象スケッチ 春と修羅」を

印刷した「大正活版所」でした。)で

名物の団子(経木まんじゅう)を買ってから、

最後にどうしても行きたかった林風舎へ行きました。

 

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そしてオーナーの宮澤和樹さんとお話することができました。

(宮澤和樹さんは宮沢賢治さんの弟・清六さんのお孫さん)

 

 

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小学館の雑誌「サライ」7月号(今年)は

「宮沢賢治を旅する」という特集でしたが、

その中の「賢治が愛したイーハトーブの原風景」という記事の中で

宮澤和樹さんの言葉が紹介されています。

 

(「イーハトーブとは・・・ドリームランドとしての日本岩手県である」

              宮沢賢治著「注文の多い料理店」広告文より)

 

 

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宮澤和樹さん(サライ7月号より)

 

 

「賢治さんは今生きているこの世界を、現実のドリームランドにしたかった。

それはユートピア(理想郷)とは違います。

理想郷は、手の届かぬ架空の世界ですから」

 

お会いしてお話する中で、

和樹さんは賢治さんの遺志を継いで

故郷花巻、岩手県、そしてこの世界をドリームランドにするための

お仕事をされているのだと感じました。

 

宅地開発や道路建設その他で

賢治さんの原風景が失われつつある現状の中で、

どうすればドリームランドは実現するのか、

というような内容のお話をしました。

 

旅館「御宿 玉川」のご主人Tさんから

花巻市街地の「大正ロマンによる活性化」

つまり賢治さんがおられた時代の雰囲気を再現しよう

という計画が、地元の商工会にあったけれども、

現在は進展していない、と伺いました。

 

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このように世の潮流は

まだまだ近代化の方向にあるのでしょう。

宮沢賢治さんが目指したドリームランド化とは

逆の方向に行っているようにも思えます。

 

私も、物心ついた頃に高度成長期に入ったので、

なつかしく大切なものたちを失う悲しみを

味わい続けてきました。

だから私の制作のテーマは「郷愁」であったのです。

 

「郷愁」というテーマの中で、

私が求めたものは、

宮沢賢治さんが求めた「ドリームランド」と同じだ、と

(あつかましいようですが)自分では思っています。

 

宮沢賢治さんの時代はまだそれを未来の方向に

作り出す希望があった。

けれども私が生きた時代は

あまりにもその要素が失われたため、

過去の方向に求める「郷愁」となってしまった・・・

 

しかしなつかしいものを求める過程の中で、

私が求めるものは「今、ここで」得られるものであることに気付きました。

(昨年出版した作品集「郷愁 ―こころのふるさとを求めて―」のテーマはそこにあります。)

 

 

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「形よりも意識が大切」だと

宮澤和樹さんは仰いました。

だからひとつのモデルとしてこの「林風舎」を作ったのだと・・・。

この世界を本当に宮沢賢治さんの目指したドリームランドにするためには、

今ここで自分にできることを

誠実に実行することが大切なのだと思いました。

 

宮澤和樹さんとのお話の中で、

私がこのたび6日間花巻に滞在しての感想を申し上げました。

 

19~17年前に来たときに比べて

失われたものも多いと思ったけれども、

花巻は、徳島と比較にならないくらい

古くからの良いもの(普遍的なものとも言えるかもしれません)

が残っているし、

大堰川プロムナードのように真の「ドリームランド」につながるような

新しくできた良いものも見受けられた・・・

これらは宮沢賢治さんが

そしてその遺志を受け継ぐ人々が

花巻にたくさんおられるからこそであると思います。

つまり私にとって花巻は

ドリームランド ― イーハトーブ が

すでに実現している地であると感じられました、と。

 

 

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花巻駅にほど近い旅館に泊まって

私は毎朝花巻駅から流れてくる「精神歌」のメロディーを聴きながら、

しみじみと幸せを感じていました。

 

 日ハ君臨シ カガヤキハ

 白金ノアメ ソソギタリ

 ワレラハ黒キ ツチニ俯シ

 マコトノクサノ タネマケリ

 

この曲が毎日流れていることだけでも、

私にとっては奇跡のように感じられました。

 

歌詞を知る人々は

このメロディーを聞くたびに

その内容が無意識のうちに心に刻まれていくでしょう。

しかしそれは洗脳というインプットではないと思います。

 

宮沢賢治さんは「感性の人」であると思います。

世界の「感じ方」を教えてくれる人、

そして私に「人間にとって最も大切なもの」を「感じる」ことを

教えてくれた人です。

 

賢治さんの作品は、

人々の心の奥深くにある大切なものを

引き出すための呼び水ともなるものです。

 

心の奥深くにある真の自分、

そしてそのような心の深いレベルでつながっているすべての大切なものを

アウトプットしてくれるものだと思います。

 

 

 

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「すでにドリームランド ― イーハトーブ である花巻」のことを

心の底から愛おしく感じられたのは、

花巻での最後の夜、御宿玉川さんの一室にいて、

隣にある柔道場の、明かりのもれる古い窓枠を見ながらのことでした。

 

宮沢賢治さんの影響でシャレたものも多いのですが、

あかぬけていない(決して失礼な意味で言っているのではありません!

「飾らない」「ありのままの」というようなニュアンスです。)

ところも多く見かける花巻です。

 

しかしあかぬけないところにこそ大切なものが潜んでいる、

と私は思います。

それは時流に乗らない、時間を超えて存在する、

この上もなく尊いものです。

 

宮沢賢治さんもそのような視点を持っていました。

 

「どんぐりと山猫」の馬車別当、

「月夜のでんしんばしら」の電気総長、

「なめとこ山の熊」の淵沢小十郎、またその老母、

「虔十公園林」の虔十

などはそれを象徴するような存在です。

 

自然界、また人間界の中にあるそのようなものたちを大切にすることにこそ、

ドリームランド実現のカギがある・・・

また自らの中にもあるあかぬけないものの中にこそ

大切なもの ― 真我 ― 宇宙意識につながるものが

潜んでいることを認め、

それを素直に、単純に、しかし力の限りに

大切にしようとすることこそが

ドリームランド、ひいては「ほんとうのさいわい」を

現実にするカギである、と思います。

 

 

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人からも自然からも大歓迎されたように感じた

花巻への旅でした。

 

6日間という短い期間に、

形にするには何年もかかるだろうと思われるほど

たくさんの創作の種をいただきました。

 

 

そして徳島に帰ってきて・・・

 

 

見つかる、見つかる!

 

身近なところに描きたいものがたくさん見つかるので驚きです。

 

花巻とは比較にならないくらい

徳島は古くからの良いものを失ってしまった、

というのは事実ですが、

花巻という地にすでに実現している

ドリームランド ― イーハトーブ を見つけたその目で見直せば、

徳島という地にも

ドリームランドが潜んでいるのが見えるのです。

 

以来頻繁に近所を散歩して

すばらしい光景をたくさん見出し、

たくさんの作品が生まれています。
 

 

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花巻旅行以降に手がけた作品

 

 

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制作中の作品

 

 

 

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花巻への旅は、

 

「ドリームランドを実現する最大のコツは、

すでにそこにあるドリームランドを見出すこと」

 

であることを、私に教えてくれました。

 

 

 

(「花巻への旅」おわり)

 

 

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